コロナ婚(東京新聞300文字小説没作)

 私には結婚を考えている彼女がいる。しかし、私は結婚式はしたくなかった。理由は2つある。1つ目。私は友達が少ないので、社交的な彼女と招待客の差がついてしまうのが恥ずかしい。そして2つ目は、人前で誓いのキスをするのが恥ずかしいということ。結婚式をしないという選択肢もあるが、彼女はウエディングドレスに憧れを抱いているようで、それも難しい。そんな最中、この世界的なコロナ騒動が起こった。

 結婚式場には、僕と彼女とマスクを付けた神父さんの3人が2メートル以上の距離をとって並んでいる。他の招待客達はその様子をネット中継で見守っている。

「それでは新郎新婦、誓いの投げキッスをお願いします」