上昇(東京新聞300文字小説没作)
わしはたった今、病院のベットの上で亡くなった。
その瞬間、わしの体は浮き始めた。下を見ると、ベットで横になる自分と、泣き崩れる娘、そしてまだわしが亡くなったことを理解できていない孫の姿が見えた。
やがて病室の天井を次々にすり抜けていくと、病院の屋上に出た。
もしかして、わしはこのまま天国まで昇っていくのかな?
わしの予想は甘かった。ついにわしは、宇宙空間まできてしまったのだ。ああ、地球がどんどん小さくなっていく。
やがて地球の姿が小さな点にしか見えなくなった頃、わしの体はついに停止し、キラキラと輝きを放ち始めた。
「ねえママ、おじいちゃん、どこに行っちゃったの?」
「おじいちゃんはね、お星様になったのよ」
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