雛人形今昔物語(東京新聞300文字小説没作)

 20年前。雛祭りを終えてからもう1週間が過ぎたというのに、パパは未だに雛人形を片付けてくれない。

「パパ、なんで片付けないの?」「雛人形はな、片付けが遅れるほど婚期が遅くなるんだ。だから、あと1か月は片付けないぞ。お前にはずっと、パパのそばにいて欲しいからな」

 現在。今日は今年で三十路を迎える私にとって、30回目の雛祭り。しかし、お父さんはお祝いもそこそこに、急いで雛人形を片付け始めた。

「お父さん、片付けるの早過ぎない?」「お前にはすぐにでも結婚してもらいたいからな。まだいい人見つからないのか?」

 お父さん、20年前と言ってることが違うよ。