相合傘作戦(東京新聞300文字小説没作)

「やっべえ雨降ってるよ。傘持ってきてないのにどうしようかな」

 僕はクラスメイトの鈴木さんが玄関にやってきたのを見計らって、大きな声で独り言をつぶやいた。

「あっ、鈴木さん。もし良かったら途中まで傘に入れてくれないかな? 確か、帰る方向同じだったよね」

「ごめんなさい。私も傘持ってきてなくて」

 あっちゃー。わざと傘を忘れて鈴木さんと相合傘で帰って仲良くなる作戦失敗か。良い作戦だと思ったんだけどな。

 あの時の僕はまだ、鈴木さんがあの日僕と同じ作戦を考えていたことをまだ知らなかった。そして将来、鈴木さんが僕と同じ名字になることも。